2013/06/14(Fri)
  鳥は  他處の物なれど、鸚鵡いとあはれなり。人のいふらんことをまねぶらんよ。杜鵑。水鷄。鴫。みこ鳥。鶸。火燒。

 山鳥は友を戀ひて鳴くに、鏡を見せたれば慰むらん、いとあはれなり。谷へだてたるほどなどいと心ぐるし。鶴はこちたきさまなれども、鳴く聲雲井まで聞ゆらん、いとめでたし。頭赤き雀斑。斑鳩の雄。巧鳥。

 鷺はいと見る目もみぐるし。まなこゐなども、うたて萬になつかしからねど、万木の森にひとりは寢じと、爭ふらんこそをかしけれ。

 容鳥。水鳥は鴛鴦いとあはれなり。互に居かはりて、羽のうへの霜を拂ふらんなどいとをかし。都鳥。川千鳥は友まどはすらんこそ。雁の聲は遠く聞えたるあはれなり。鴨は羽の霜うち拂ふらんと思ふにをかし。

 鶯は文などにもめでたき物につくり、聲よりはじめて、さまかたちもさばかり貴に美しきほどよりは、九重の内に鳴かぬぞいとわろき。人のさなんあるといひしを、さしもあらじと思ひしに、十年ばかり侍ひて聞きしに、實に更に音もせざりき。さるは竹も近く、紅梅もいとよく通ひぬべきたよりなりかし。まかでて聞けば、あやしき家の見どころもなき梅などには、花やかにぞ鳴く。夜なかぬもいぎたなき心地すれども、今はいかがせん。夏秋の末まで老聲に鳴きて、むしくひなど、ようもあらぬものは名をつけかへていふぞ、口惜しくすごき心地する。それも雀などのやうに、常にある鳥ならば、さもおぼゆまじ。春なくゆゑこそはあらめ。

年立ちかへるなど、をかしきことに、歌にも文にも作るなるは、なほ春のうちならましかば、いかにをかしからまし。人をも人げなう、世のおぼえあなづらはしうなりそめにたるをば、謗りやはする。鳶、烏などのうへは、見いれ聞きいれなどする人、世になしかし。さればいみじかるべきものとなりたればと思ふに、心ゆかぬ心地するなり、祭のかへさ見るとて、雲林院、知足院などの前に車をたてたれば、杜鵑もしのばぬにやあらん鳴くに、いとようまねび似せて、木高き木どもの中に、諸聲に鳴きたるこそさすがにをかしけれ。

 杜鵑は猶更にいふべきかたなし。いつしかしたり顏にも聞え、歌に、卯の花、花橘などにやどりをして、はたかくれたるも、ねたげなる心ばへなり、五月雨の短夜に寢ざめをして、いかで人よりさきに聞かんとまたれて、夜深くうち出でたる聲の、らうらうじく愛敬づきたる、いみじう心あくがれ、せんかたなし。六月になりぬれば音もせずなりぬる、すべて言ふもおろかなり。

 夜なくもの、すべていづれもいづれもめでたし。兒どものみぞさしもなき。