2013/11/06(Wed)
 主殿司(とのもりづかさ)こそなほをかしきものはあれ。下女のきははさばかり羨しきものはなし。よき人にせさせまほしきわざなり。若くて容貌よく、容體など常によくてあらんは、ましてよからんかし。年老いて物の例など知りて、おもなきさましたるもいとつきづきしうめやすし。

 主殿司の顏、愛敬づきたらんをもたりて、裝束時にしたがひて、唐衣など今めかしうて、ありかせばやとこそ覺ゆれ。
2013/10/30(Wed)
  月夜に空車(むなぐるま)ありきたる。清げなる男のにくげなる妻もちたる。髯黒ににくげなる人の年老いたるが、物語する人の兒もてあそびたる。

2013/10/25(Fri)
  廊に人とあまたゐて、ありく者ども見、やすからず呼び寄せて、ものなどいふに、清げなる男、小舎人童などの、よき裏袋に衣どもつつみて、指貫の腰などうち見えたる。袋に入りたる弓、矢、楯、鉾、劍などもてありくを「誰がぞ」と問ふに、ついゐて某殿のといひて行くはいとよし。氣色ばみやさしがりて、「知らず」ともいひ、聞きも入れでいぬる者は、いみじうぞにくきかし。

2013/10/18(Fri)
 にげなきもの  髮あしき人のしろき綾の衣著たる。しじかみたる髮に葵つけたる。あしき手を赤き紙に書きたる。下衆の家に雪の降りたる。また月のさし入りたるもいとくちをし。月のいとあかきに、やかたなき車にあひたる。又さる車にあめうしかけたる。老いたるものの腹たかくて喘ぎありく。また若き男もちたる、いと見ぐるしきに、他人の許に行くとて妬みたる。老いたる男の寢惑ひたる。又さやうに髯がちなる男の椎つみたる。齒もなき女の梅くひて酸がりたる。

 下衆の紅の袴著たる、このごろはそれのみこそあめれ。
 靱負佐の夜行狩衣すがたも、いといやしげなり。また人に恐ぢらるるうへの衣はたおどろおどろしく、たちさまよふも、人見つけばあなづらはし。「嫌疑の者やある」と戲にもとがむ。
2013/09/08(Sun)
 七月ばかりに、風のいたう吹き、雨などのさわがしき日、大かたいと涼しければ、扇(おうぎ)もうち忘れたるに、汗の香少しかかへたる衣の薄き引きかづきて、晝寢したるこそをかしけれ。